ナザレ(現在のイスラエル北部地区の都市)のイエス(前2年~33年)は、大工のヨセフと聖霊によって身ごもった聖母マリアの間に生まれ、荒野での断食中に悪魔の誘惑を受けるものの、これをはねのけました。そして、キリスト教は生まれたのです。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の元になる人々の始祖アブラハムから、イサク→ヤコブ(ユダヤ人の祖)→ユダから10代→ダビデ→ソロモン→レハベアムから11代→ヨシヤ→エホヤキンから9代→エレアザル→マタン→ヤコブ→ヨセフと続きます。このヨセフは大工を生業として、ユダヤ教の律法に忠実に生きる男でした。

ヨセフがベツレヘム(現在のヨルダン川西岸地区中央の都市)にいる時のこと、夢の中に天使が現われ、マリアという女性と結婚するよう告げられます。そして、そのお告げに従い、彼はマリアと婚約しました。

ある日のこと、マリアの元にも天使ガブリエルが現われます。そして、天使はマリアに対して、聖霊によって彼女が妊娠することを告げるのでした。

このようにイエスは、天使のお告げで聖霊によって生まれたとされる伝説があり、生まれながらにして神に関わる運命を持った人だったのです。そして、生まれてすぐに苦難の始まりとして、ヘロデ大王による幼児殺害の命令が発せられました。

ヨセフは、マリアとイエスを連れベツレヘムを逃れ、天使のお告げに従ってエジプトへと向かいます。やがてヘロデ大王が亡くなると、またも天使のお告げによってナザレへと移り住んだのでした。

12才になったイエスは、ユダヤ人として成人になる準備のため、両親と共にエルサレムへの巡礼を行ないます。その帰りのこと、イエスがいなくなったことに気付いたヨセフたちがエルサレムの神殿に戻ると、イエスはそこでラビ(ユダヤ教の指導者)たちと語らい、その聡明さに感心されているところを見つけます。

マリアが心配していたことを話すと、イエスは自分は必ず「父」のところにいるのだと答えます。この時すでに、イエスは自分が神(=「父」)の子であると自覚していたのでした。

30才ほどに成長したイエスは、ヨルダン川で洗礼を施しているヨハネを紹介されます。ここで初めてイエスは洗礼を受け、原罪(アダムとイヴから受け継がれた罪)と自罪(生まれてから犯してきた罪)が許されることとなったのでした。

洗礼を終えたイエスを、聖霊が荒野へと誘います。荒野を歩き回ること40日間、まったく何も食べず空腹でいたイエスのところに、ついに悪魔が現れました。

悪魔は、イエスが神の子なのであれば、石をパンにしてみろと誘惑します。空腹は非常にこたえてはいたことでしょうが、イエスは人はパンだけで生きているのではないと拒絶しました。

次に悪魔は、高いところにイエスを連れて行って世界中を見せながら、全ての国を与えるので自分にひざまづけと言います。これに対してイエスは、神を拝み神のみに仕えよとあるとして、これも拒絶するのです。

イエスに何かを与えようとしてもうまくいかないことに気付いたのか、次に悪魔はイエスが本当に神の子であるのかを試すことにしました。まず、エルサレムの宮の上から飛び降りてみて、神の助けがあることを証明させようとするのです。

しかし、イエスは神を試してはならないとして、断固として悪魔の提案を受け付けることはありません。いろいろな誘惑を試した悪魔でしたが、これらのイエスの神の子としての強い信念に基づく選択に、やがて退散してしまったのです。

こうして荒野の試練を無事終えたイエスは、後にキリスト(救世主)と呼ばれることとなり、自らの教え(キリスト教)を広め始めるのでした。